
治験について知る
治験とは

「薬」は、さまざまな過程を経て誕生します。まず、化学合成・植物・土壌中の菌・海洋生物などから発見された物質を、試験管の中での実験や動物実験を行って有効性(薬の効果)や安全性(薬の副作用)を確認します。そして、人に使用しても安全と予測されるものが「薬の候補」として選ばれます。
次に、「薬の候補」の有効性と安全性を、人で調べる試験を行います。この試験のことを、一般に「臨床試験」と呼んでいます。特に、厚生労働省から「薬」として承認を受けるために行う臨床試験のことを「治験」と呼んでいます。
治験は病院で行われます。治験を行う病院は、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」という規則に定められた要件を満足する病院だけが選ばれます。
治験を行う病院の要件
- 医療設備が充分に整っていること
- 責任を持って治験を実施する医師、看護師、薬剤師等がそろっていること
- 治験の内容を審査する委員会を利用できること
- 緊急の場合には直ちに必要な治療、処置が行えること
乳がん患者さんへ
治験という選択肢があります
治験の3つの段階
治験には、下記の3つの段階があり、順番に各段階での安全性や有効性を確認しながら開発を進めます。
第Ⅰ相試験:健康な成人が対象
薬の候補の安全性、体内での吸収、作用、排泄について確認します
第Ⅱ相試験:少数の患者さんが対象
薬の候補の効果、安全性とともに、用法・用量を確認します
第Ⅲ相試験:多数の患者さんが対象
薬の候補の効果、安全性の最終確認を行います。既存薬やプラセボ(偽薬)※とも比較します。
※プラセボとは、見た目や味は治験薬と同じですが、有効な成分を含まない薬のことで、偽薬(ぎやく)とも呼ばれます。
インフォームド・コンセント

治験は、患者さんの自由な意志に基づく文書での同意がないと始められません。医師から治験の目的、方法、治験に参加しない場合の治療法、「薬の候補」の特徴などが書かれた「説明文書」を手渡され、その内容が詳しく説明されます。患者さんは、それに対しわからないこと、確認したいことなど、納得するまでどんなことでも質問することができます。
そして、治験に参加するかしないかは、だれからも強制されることなく、自分の意思で決めてください。説明を受けたその場で決めず、説明文書を持ち帰って家族に相談してから決めることもできます。
説明文書に書かれていること
- 治験の目的、治験薬の使用方法、検査内容、参加する期間
- 期待される効果と予想される副作用
- 治験への参加はいつでもやめることができ、不参加の場合でも不利益は受けないこと
- 副作用が起きて被害を受けた場合、補償を請求できること
- カルテ、検査結果などの医療記録を治験を依頼した製薬会社、厚生労働省、治験審査委員会の担当者が見ること
- 担当する医師の氏名、連絡先
- 治験に関する質問、相談のための問い合わせ先 等
治験に参加する方法と参加した場合の注意点
治験への参加は、医師から勧められるケースや、病院内の募集ポスターを見て患者さんが応募されるケースが一般的です。最近は、新聞やインターネット上で参加者募集のお知らせを見て、応募される患者さんも増えています。
治験への参加が決まったら、患者さんに治験中に守っていただかなければならないことがあります。安全の確保と信頼できるデータを集めるためです。その内容は、インフォームド・コンセントの際に手渡される説明文書に記載されています。
一般的な注意事項
- 治験薬の服薬方法、検査など
治験薬の服薬方法、服薬期間、回数を正確に守ってください。使わなかった治験薬は、まだ国から承認された薬ではないので、必ず返却してください。 - 生活上の注意
治験の内容や病気の種類によっては食事や運動に関する注意や、飲酒、喫煙などの制限があります。 - 他の病院を受診される場合、他の薬を服用する場合の注意
他の病院を受診したり、新たな薬を服用する場合には前もって治験を担当する医師に相談してください。他の薬と治験薬を組合せて使用すると、それぞれの作用を弱めたり、または強めたりするなど予期しないことが起こることがあります。他の病院を受診される場合は、必ず治験を担当する医師にご相談ください。そして、他の病院の医師にも、患者さんご自身が治験に参加されていることをお伝えください。また、市販の風邪薬や漢方薬などを服用する場合も、前もって治験を担当する医師にご相談ください。 - 体調に変化が見られた場合の注意
治験薬を使い始めて、いつもとちがう症状が見られたときは、すぐに担当医師に連絡してください。