乳癌セカンドオピニオンに悩んだら…

最終更新日 2017年11月8日
聞き手・まとめ:エムスリー株式会社 遠藤 理香

聖路加国際大学 公衆衛生大学院 乳腺専門医 北野 敦子(きたの あつこ)先生
聖路加国際大学 公衆衛生大学院
乳腺専門医
北野 敦子(きたの あつこ)先生

「セカンドオピニオン」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。一方、セカンドオピニオンの正しい目的や、実際の利用の仕方はご存知でしょうか?エムスリー株式会社はこのほど、医師487人と患者さん1029人を対象に、双方の視点から「セカンドオピニオン」についての意見を尋ねるアンケート調査を実施しました。

今回は、アンケート調査の結果をもとに、費用と時間を無駄にしない、かしこい乳癌セカンドオピニオンの受け方について、日本乳癌学会専門医の聖路加国際大学 公衆衛生大学院 北野 敦子先生に伺いました。

約9割の患者が「主治医にセカンドオピニオンを受けたいとは、言いづらい」との結果に

―エムスリー株式会社ではこのほど、医師487人と患者さん1029人を対象に、双方の視点から「セカンドオピニオン」についての意見を尋ねる調査を実施しました。その結果、約9割の患者さんは「主治医にセカンドオピニオンを受けたいと伝えることは、言いづらい」と感じていました(図1)。セカンドオピニオンを受けたいと言われたら、主治医はどのように感じるものなのでしょうか。

【調査の概要】
・調査期間:2017年8月
・回答数:m3.com医師会員(n=487)、患者(n=1029)
※患者側調査は、エムスリーが提供している、患者から医師へのQ&Aサイト「AskDoctors」の会員に対して実施した。
Q【患者対象】主治医にセカンドオピニオンを受けたいと伝えることに、言いづらさを感じますか?
患者側(n=1029)
  • 非常に感じる
  • やや感じる
  • あまり感じない
  • 全く感じない
54.4% 32.1% 10.3% 3.2%

北野 私自身は、患者さんからセカンドオピニオンを受けたいと相談されても、とくに不快にはならないですね。ただ、どうしてその患者さんがセカンドオピニオンを受けたいと思ったのか、理由はお聞きすると思います。それは、本来の意味でのセカンドオピニオンを受けていただきたいからです。セカンドオピニオンの目的とは、現在の診断・治療に関して、担当医師以外の医師に意見を求め、患者さんがご自身の治療に対して最良の方法を選択する上で参考とすることです。一方、患者さんの中には、「乳癌と診断されてびっくりして、不安で、とりあえずたくさんの情報を得たいから」、「もっと相性のよい医師、もっとよい医療機関があるのではないか」などの、本来の目的からはずれた理由でセカンドオピニオンを受けたいとおっしゃる方もいらっしゃいます。そのよう理由でセカンドオピニオンを受けるのは、時間と費用の無駄だなと思います。セカンドオピニオンについて相談されても不快にはなりませんので、まずは、なぜ受けたいのかを主治医に相談してみてはいかがでしょうか。

―今回の調査では、主治医の立場としてセカンドオピニオンを受けたいと言われた場合、9割近い医師は「不快にはならない」と回答していました(図2)。

Q【医師対象】主治医の立場としてお答えください。セカンドオピニオンを受けたいと言われた場合、不快な気持ちになりますか?※実体験がない場合は、仮定の話としてお答えください。
医師側(n=487)
  • 不快な気持ちになる
  • 不快な気持になることはない
11.5% 88.5%

北野 セカンドオピニオンを受けることは患者さんの権利です。セカンドオピニオンを受ける目的や理由がしっかりしているのであれば、多くの医師は特に不快にならないのではないでしょうか。多くの患者さんが言いだしづらいと感じているようですが、セカンドオピニオンを受けたいと、主治医に臆せずに言ってよいと思いますよ。

―本来の意味でのセカンドオピニオンを受けるためには、患者さんは、どのような準備をしたらよいのでしょうか。

北野 「とりあえず情報が欲しい、とりあえず他の医師の意見を聞いてみたい」というスタンスでは、セカンドオピニオンは無意味なものに終わってしまいます。セカンドオピニオンを無駄なものにしないためには、患者さんはご自身で手に入れられる情報の範囲で結構ですので、病気について学ぶことが重要だと思います。以前は正しい情報の入手が難しかったかもしれませんが、現在は、日本乳癌学会が作成した『患者さんのための乳癌診療ガイドライン』が発売されていますし、無料でインターネット閲覧することもできます。納得のいく医療を受けるためには、患者さんが標準治療(=最善の治療)や診療方法について正しく理解したうえで、主治医と相談し、その人に合った治療を選択することが重要です。したがって、まずは、ご自身が置かれている状況の標準治療について調べてみましょう。その上で、疑問に思ったことは主治医に相談して、それでも悩むようなら、セカンドオピニオンを受けてみるのも選択肢のひとつだと思います。

ホルモン療法・抗がん剤の選択や再発・転移の治療方針に悩んだら、セカンドオピニオンも選択肢に

―乳癌患者さんは、どのような状況のときに、セカンドオピニオンを受けたらよいのでしょうか。

北野 乳腺専門医は、基本的にガイドラインに応じた診療を行います。しかし、ガイドラインのなかでも、十分な科学的根拠が確立していない診療行為については、推奨グレードがCやD(推奨度が低い)と位置付けられていることがあります。推奨グレードがAやB(推奨度が高い)の診療行為については、医師も判断に迷いませんが、推奨グレードCやDの診療行為については、医師の間で意見が分かれることがあります。そのような場合は、他の医師の意見を聞いて治療法を選択することも有用です。医師によっては、「セカンドオピニオンを受けてみますか」と自ら勧めることもあるかもしれません。

―具体的に、どのようなケースが考えられるでしょうか。

北野 例えば、薬物療法の選択に悩むようなケースです。個々の患者さんの病態に合わせた薬剤を選択しますので、患者さんの状態によってはホルモン療法だけでいくのか、抗がん剤を使ったらいいのか、判断に悩むことがあります。また、乳癌が再発してしまったときの治療方針についても、医師の間で意見が異なることがあります。

―先生は若年性乳癌を研究テーマにされていますが、乳癌患者さんの妊娠・出産に関することも、セカンドオピニオンの対象になり得ますか。

北野 はい、なります。これから妊娠を希望されている方に乳癌が見つかった場合や、妊娠中にみつかった乳癌治療などは、医師の間で見解が分かれることがあります。乳癌患者さんの妊娠出産や生殖医療に関しては、日本がん・生殖医療研究会(現日本がん・生殖医療学会)などが編集した『乳がん患者の妊娠出産と生殖医療に関する診療の手引き 2014年版』が無料でオンライン公開されています。この手引きは医療従事者向けの内容ですので、患者さんには少し難しいかもしれませんが、治療内容に悩んでいるようでしたら、一度読んでみるとよいと思います。乳癌患者さんの妊娠・出産に関しては、「手術をしたあとの妊娠はいつなら可能か」、「排卵誘発剤を使った不妊治療は行えるのか」などについては、医師の間でも特に意見が異なる分野ですので、セカンドオピニオンを受けていただくのもよいと思います。

【セカンドオピニオンが選択肢となる乳癌のケース】

  • 薬物療法(ホルモン剤、抗がん剤など)の選択に悩む場合
  • 転移・再発した場合
  • 妊娠を希望しているが乳癌と診断された場合
  • 妊娠中に乳癌と診断された場合

―一方、セカンドオピニオンを特に受ける必要はないと考えられるのは、どのようなケースでしょうか。

北野 主治医が提案した治療内容と、患者さんがご自身で学んだ正しい情報が一致していれば、セカンドオピニオンを受ける必要はないのではないでしょうか。

―今回のアンケート調査では、ほとんどの医師がセカンドオピニオンの紹介は可能との回答でした(図3)。セカンドオピニオン先として、どのような病院を紹介先してもらえるのでしょうか。

Q【医師対象】セカンドオピニオンの医師の紹介を求められた場合、応じることはできますか?
  • 基本的に紹介は可能
  • 特定の診療科や疾患に限る
  • 患者の希望があった場合のみ
  • 基本的に紹介には応じていない
  • その他(具体的に)
GP
77% 17.1% 5.9%
HP
81.9% 13.6% 4%

北野 きちんと標準治療を行う乳腺専門の先生を紹介することは基本とした上で、それぞれの分野が得意な先生へ紹介することが多いです。例えば、抗がん剤やホルモン療法に悩んでいるのだったら、薬物療法が得意な先生へ、妊娠・出産に悩んでいるのだったら、生殖医療が得意な先生へ、といった形です。

―患者さんが、ご自身で紹介先を探してくることもあるかと思います。実際、アンケート調査では、患者さんはセカンドオピニオン先を「インターネットの口コミ」で最も多く探していました(図4)。患者さんが探してきた紹介先に対して、主治医の先生からアドバイスはいただけるのでしょうか。

Q【患者対象】セカンドオピニオンを受けた医師はどのように探しましたか
インターネットでの口コミ
138
友人、家族などの紹介
95
その他(具体的に)
58
主治医の紹介
39
学会の専門医一覧
15
マスメディア(病院ガイドやテレビ番組など)
13
未回答
105

北野 はい、ある程度はアドバイスできると思います。やはり、医師は自分が担当している患者さんは、自分以外の医師であっても信頼できる医師に診てもらいたいと思っています。したがって、患者さんが探してきた医師がどのような治療をしているのかは調べますし、科学的根拠に欠ける医療をしているところには、紹介を躊躇します。セカンドオピニオンを受ける際は、紹介先の医師に、診断に至った経緯や、これまでの治療内容などを正しく伝える必要があります。そのため、主治医は、患者さんから依頼があれば、診療情報提供書(紹介状)などの資料の準備をします。その依頼をするときに、ご自分で探した紹介先について、主治医に相談してみてはいかがでしょうか。

―北野先生、本日はありがとうございました。

【セカンドオピニオンの上手な受け方】

ステップ1 担当医に「診療情報提供書」や検査データなどの資料をもらう
ステップ2 セカンドオピニオンを行っている医療機関を探し、受け入れ状況や費用を確認しておく
ステップ3 病期の経過と聞きたいことをまとめておく
ステップ4 担当医に報告して今後のことを相談する
―詳しくは「複数の医師に意見を求める「セカンドオピニオン」を利用する」をご覧ください―

プロフィール

北野 敦子 (きたの あつこ) 聖路加国際大学 公衆衛生大学院在学

医師、医学博士
専門:腫瘍内科
資格:乳腺専門医、外科専門医など
略歴:聖路加国際病院 乳腺外科、国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科での勤務を経て、現在聖路加国際大学 公衆衛生大学院在学。若年性乳がん体験者サポートコミュニティPink Ringを立ち上げ、現在は同団体のチーフメディカルアドバイザーを兼務。
主な研究テーマ:若年がん、妊娠期がん、がんサバイバーシップ、がん・生殖医療など